大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和38年(オ)45号 判決 1964年4月17日

上告人

空知商工信用組合

右代表者代表理事

美濃部忠良

右訴訟代理人弁護士

上田保

被上告人

大潤一郎

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人上田保の上告理由について。

原判決は、実在する会社である訴外みつわ林業株式会社が判示の経緯から営業上は「三ツ輪林業株式会社」の名称を用いるのを常とし、手形取引においてもその名称を用いていたのであり、被控訴人(上告人)においても、本件手形取引に当り右の事実を知つていたものである旨を判示した趣旨であること判文上明らかであつて、上告人が右訴外会社の商業登記簿上の名称をも知つていたかどうかおよび右商業登記簿上の名称が本件手形振出当時一般に周知であつたかどうかは原判決の判示するところではなく、またその旨の判示は上告人の本訴請求を排斥するにつき必要ではないから、所論はその前提を欠くものといわざるをえない。原判決に所論の違法がなく、論旨は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官奥野健一 裁判官山田作之助 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外)

上告代理人上田保の上告理由

(前略)

原判決摘示の如く、みつわ林業株式会社は、昭和三四年一〇月二〇日、和木材工業株式会社の商号を右のように変更し同日訴外山下義雄、被上告人等がその取締役に就任し、その登記を同年一一月二六日にそれぞれ了したものであることは乙第一号証によつて明かであるから、登記の日である昭和三四年一一月二六日以降、実際上の取引および手形取引においても、会社名を三ツ輪林業株式会社と表示しておつたとしても、本件手形が振出され上告人に交付された同年一二月二八日までの期間は、僅かに三十二日である。

第一審証人木村隆太郎の証言によれば、「問、会社の事務所は、なんか表にかんばん出てるのですか、答、ええ、かんばん出ておりました、問、こういう、かん字の三ツ輪林業株式会社、答、ええ、書いてありました。」とあつて、会社表の看板も三ツ輪林業株式会社と表示してあり、甲第二号証の一、二によつて明かである如く、訴外山下義雄、被上告人等の名刺も三ツ輪林業株式会社と表示されており、その使用する印鑑、印判等も三ツ輪林業株式会社となつておつたのであるから、株式会社の名称を使用しておる以上、一般の取引者としては、三ツ輪林業株式会社こそ、名実とも、実在の会社であると信じこそすれ、みつわ林業株式会社と登記されている会社が三ツ輪林業株式会社の名称で営業活動をしている会社と同一会社であると信ずる余地もない。みつわ林業株式会社なる名称は、全く使用されておらないのにどうして知ることが出来るであろうか。上告人の如く、手形取引に不安を感じ、会社の実体を調査せんとして商業登記簿の閲覧を求めて始めてみつわ林業株式会社の実在することを知る以外にこれを知ることが出来ない。本件手形が振出され上告人に交付された当時、三ツ輪林業株式会社が、取引上みつわ林業株式会社を表示する名称として取引者間に慣用され又はその別名であると一般に明かにされておつたとは社会通念上解し難く、右事実の認定は採証の法則に違反するものである。(大審院昭和八年(オ)第六三三号昭和八年一二月六日判決参照)(後略)

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